本書は、弁護士である著者が、70年安保直後の大学で感じた、ヒトの営みの悲しさや苦しさ、弁護士となって目の前で繰り広げられる相互不信、欲望のぶつかり合い、その中で「ヒトとは、なにか?」を自然科学的にアプローチした論考である。
「ヒトの環世界という視点」「抽象化能力と同値類別の重要性」「抽象化能力と言葉の獲得の関係」「二次環境としての仮想現実」「欲求の分類」「寄る辺」「可知世界と不可知世界」「群れる生物としての特徴」といったキーワードをもとにヒトの本質に迫ろうと試みた。
エビの仲間のヤドカリが、なぜか死んだ貝の残した貝殻を利用するようになり、あげくに体まで変化し、貝殻なしでは生きていけなくなった“不利”な進化を遂げていることを通じて、ヒトをめぐる環境・進化を考えるところから始まる小考である。