1920年に始まる僅か13年間の活動で政権を獲得し、信任投票で国民の圧倒的な支持を得たヒトラーとナチス党。
彼らの思想のナチズムを生む母体となる政治的で人種論的な反ユダヤ主義を、長年(1850年頃から1930年頃)にわたり育ててきた、才能も学識も豊かな著名人たち(ワグナー、トライチュケ、ラガルド、ニーチェ、ハイデガー)。
その中でも特に、ニーチェの文学思想と、ハイデガーの実存主義について、その中に見出される反ユダヤ主義とナチズムの究明を試みたのが本書である。
ナチズムに関連する犠牲者、特に絶滅収容所で殺害された200万人ともいわれる子どもたちの死を無駄にしないためにも、反ユダヤ主義と反民主主義にまみれたニーチェの思想や、「高級な泥沼の中の棍棒」(詩人ツェランのことば)のハイデガーの思想との訣別をと著者は訴える。