「戦争」の語り部たちが
少なくなったいまだからこそ、
遺しておきたい物語がある――。
戦前・戦中・戦後を11~13歳の多感な少年期において過した著者が、同じ時代を生きたひとたちに、そして「戦争下での暮らし」を知らない世代に語り部として記した一冊。
和歌山の紀北地方に暮らす12歳の少年・山下正二と、東京から単独疎開でやってきた11歳の橘にしきの淡い恋物語を軸に、当時の日常を淡々と描いていく。
「あのタヌキ先生の口車に乗せられ、特攻を志願して18歳あまりで死んでいった吉田鉄三兄さん可哀想や。あんな犬より劣るようなアホな先生が生き残りよって(中略)
――オレもこれからは、どんなことでも必ず反対からも考えたり、のぞいてみて、善悪の判断をしてやろう――<本文より>」
いま、この時代だからこそ、ひとりの語り部の声に耳を傾けたい。